Label: Vihta Records
Catalog#: VIHT-001
Format: CD, Album
Country: Japan
Released: 2016
1 Section 1 6:53
2 Section 2 5:01
3 Section 3 3:28
4 Section 4 6:49
5 Section 5 6:57
6 Section 6 8:39
7 Section 7 3:41
6 Section 8 9:49
「サウナ室の静けさがちょうどいいんですよ。静けさって消して無音ではなくて、水や蒸気の音が小さく聞こえるからこそ、逆に静けさを感じる。」(Coyote No.60 インタビューより)
熱い石にアロマを含む水をかけることで発生する水蒸気で全身を包み、体を温めて発汗と血行を促進させるフィンランド式サウナ「ロウリュ」。日本のサウナの主流であった高温低湿のドライサウナと異なり、80度ほどの中温多湿のサウナで、体への負担や刺激が少ないという点から女性や若年層の支持を受けて、近年のサウナブームの火付け役になっているそうです。この「ロウリュ」の静けさに身を浸し、蒸気音を耳で堪能しようというマニアックなプログラム「サウンドロウリュ(Sound Löyly)」を立ち上げ、2015年より全国を巡るツアーを行っているのが、作曲家兼ロウリュ師=とくさしけんご。本作「Music For Sauna」は、とくさし氏がサウナで「ととのう」ためのイージーリスニング・ミュージックとして、昨年11月26日(いい風呂の日)にリリースされた作品。アート・ディレクションを担当しているのは、もう一人の「サウンドロウリュ」提唱者でありサウナ大使のタナカカツキ氏。
再生ボタンを押すと、タポンという水の音。続いて聞こえてくるシューシューという蒸気音は、ツアー初日の会場であった横浜駅直結のスカイスパYOKOHAMAで録音されたもの。そんなサウナの情緒にのせて聞こえてくるのは、クラシックや軽音楽、または古いシンセサイザー・ミュージックへのオマージュ。高級スパやサロンのラグジュリーなイメージよりも、ひなびたハワイアンセンターや歌謡曲の有線が流れる銭湯が似合いそうな、絶妙なレトロ感が漂うエレクトロニック・サウンドが、約50分にわたり、とろとろと流れるような長閑な時間を演出しています。本編と同様に素晴らしいのが、岩波新書風デザインの付属冊子「ととのう音楽100選」。この冊子では、おそらく本作のアイデアの源となっているだろうクラシック・現代音楽・軽音楽から、エキゾチカやポップスに及ぶ音楽が、サウナというお題を元に独特のユーモアを交えつつ軽妙な語り口で紹介されています。
現在のニューエイジ・ミュージックとは出所を異にする、J-WAVE時代の「デイジーワールド」や「世界の快適音楽セレクション」的とも言うべき魅惑のサウナ音楽が、かたや消費社会から生まれたBGM的なるものを反転化させたヴェイパーウェイヴと「蒸気音楽」という点で繋がってしまうことも……偶然とはいえ、なんだか印象深いことでありました。