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Channel: _Noise-Drone-Industrial via Rick Shide on Inoreader
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12月のリスニングから
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The-Midnight-Sun.png
C Duncan - The Midnight Sun (FatCat Records, 2016)
listen Do I Hear
昨年2月、いかにもこの作曲家らしいメロディだと思いながら聴き耽っていた "Pearly-Dewdrops' Drops"(「EP」収録)という曲は、実はCocteau Twinsのカバー。この作曲家のルーツ的側面を明かしてくれるような選曲だった。C DuncanことChristopher Duncan(クリストファー・ダンカン)は、彼らと同じスコットランド出身の作曲家であり画家。ソフトサイケ風味のきいた田園フォークと、フォーレやラヴェルといったクラシック作曲家に喩えられるコーラル的和声がブレンドされた、深く甘い針葉の香りを放つ独特のサウンド。TVドラマ「トワイライトゾーン」のシーズン3にインスパイアされたという新作では、牧歌性がやや後退するかわりに幻想的なスケールをさらに広げている。今もっとも好きなシンガーソングライターのひとり。

Syncope.png
Port St. Willow ‎- Syncope (People Teeth/flau, 2016)
C Duncan同様に、Grizzly Bearや後期Talk Talkが引き合いに出されていた作品。即興によるフリーフォームで実験的なセクションに比重が置かれ、ダウントーンの密室空間にファルセットが舞い漂う幻想耽美なサウンドが展開される。Port St. Willow(ポート・セント・ウィロー)は、ポートランド出身で現在NYブルックリンを拠点に活動するNicholas Principe(ニコラス・プリンシプ)によるソロ・プロジェクト。エンジニアのVictor Nash(ヴィクター・ナッシュ)がフレンチホルンとトランペット、他にアルトサックスやピアノでゲストを迎えているが、この統制されたバンドアンサンブルの骨格はマルチ・インストゥルメンタリストであるプリンシプ自身が演じている。2015年にプライベートレーベルPeople Teethからヴァイナル、年を跨いで東京のレーベルflauからボーナストラックを含むCDエディションがリリース。昨年末いろいろな方のベストディスク上位に選ばれていたことも納得だった。

Claus-%2526-Clausen.png
Gaspar Claus & Casper Clausen - Claus & Clausen (L'autre Distribution, 2016)
listen Channel
Arthur Russellを彷彿とさせるエコーと静寂、空間を震わすチェロと声の霊舞。フラメンコ・ギタリストPedro Soler(ペドロ・ソレール)を父にもつフランス人チェロ奏者Gaspar Claus(ギャスパー・クラウス)と、コペンハーゲンのオーケストラル・ポストロック・バンドEfterklang(エフタークラング)のメンバーとして活動してきたヴォーカリストCasper Clausen(キャスパー・クラウセン)。名前のスペルがよく似ているが、それぞれの祖父が1954年の初めにリスボンの同じ場所に居合わせていて、彼ら自身も10代の頃に同じ住居で顔を合わせずに1週間過ごしたことがあり、これまで何度も同じ場所ですれ違っていた。2人が出会ったのは、共通の友人である映像作家Vincent Moon(ヴィンセント・ムーン)が、2014年12月にリオデジャネイロで見た奇妙な夢がきっかけに。「2人の老人がほとんど並行した長い道を歩いていて、その道が合流する地点でもうひとりの男が立っていた……」老人がポルトガルを話していたことからリスボンだと確信。クラウスとクラウセンにその予言的な夢の内容が告げられ、2015年2月に3人はリスボンに集まりこのアルバムを4日間で録音させた。幾多の物語を引き寄せたVincent Moonは、本作の(偶然の)脚本家といえる存在だと思う。

Saints-OST.png
Hiele - Saints OST (Ekster, 2016)
初代フランス皇帝ナポレオン幽閉の地。世界一孤立した有人島としてギネスに登録されている、イギリス領の火山島・セントヘレナ。広大な南太西洋に浮かぶこの島に行くためには、南アフリカ・ケープタウンから3週間おきに運行される郵便船に乗って、片道5日間かけて行くしか方法はなかった。しかし、セントヘレナ空港が開港すれば、片道5時間で移動できるようになるという。新たな空路を活用し、絶海の孤島をエコツーリズムの楽園に変え、多くの観光客を獲得しようとする外国人投資家と英国政府。島の在り方や住民の生活が大きく変わろうとしているセントヘレナを映した、Dieter Deswarte(ディター・デスワルト)監督によるドキュメンタリー映画「Saints」のために、ベルギーの作曲家Roman Hiele(ローマン・ヒール)が制作したサウンドトラック。クラリネットやダブルベース、アルモニカやハンドパンに似たやわらかで透明な響きを主調に、Laurence Craneの新作にも近い簡素簡潔としたモダンクラシカルな作風と、Eksterらしいエキゾ感漂うレフトフィールドなエレクトロニック・トラック。全体で18分。

Totems.png
Arden Day & Wysozky, Benjamin Tixier - Totems (Cairos Edition, 2014)
スイス・ロカルノ国際映画祭で金豹賞を受賞したSarah Arnold(サラ・アーノルド)監督による短編映画「Totems」のサウンドトラック。Arden Day(アーデン・デイ)はプリペアードピアノとハーディガーディに似た箱形楽器ボアタ・ボードンBenjamin Tixier(ベンジャミン・ティクシエ)はギターを演奏しWysozky(ヴィソツキー)がコンピューター・プロセッシング、録音アレンジミックスあmでを担当している。BABの発するぼんやりとした持続音の上を、ブリッジミュートしたギターと打楽器感の強いピアノが転がる "L'arrivée" や "Libération" のリズミックな耳心地DayとWysozkyは、今月末にPenultimate Pressから初のヴァイナル作品「The Pancrace Project」をリリースする。

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Phantom Posse - Be True (2016)
Phantom Posse(ファントム・ポッセ)は、NYブルックリンで活動するEric Littmann(エリック・リットマン)が、個人的な感情を投影したオーディオ日記として毎月EPをリリースしていたPhantom Powerが礎石となり、そこに個性的で才能溢れるシンガーソングライターが集まったDIYドリームポップ・コレクティヴ。「Be True」は彼らが自主リリースした4枚目のアルバムで、スリーヴには11名のソングライターの名が記されている。1曲毎に作曲者兼リード・ヴォーカルが変わるヴォーカル・トラックと、その間にインタールード的に挿入されるインスト曲。各ソロ作品へ分岐する交差点の道標ともいうべき作品で、コレクティヴの温かくフレンドリーな雰囲気が伝わってくるような、しみじみと素敵な作品だと思う。フェイヴァリット・トラックは、Nadia Hulett(ナディア・ヒュレット)が歌う "Carmela & Tone" と美しいアンビエント・シンセ "Stay True" 。Chris Masullo(クリス・マスロ)のソロ名義Nicholas Nicholas(ニコラス・ニコラス)の新作「About Town」も素晴らしい作品だった。


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